『米国では1976年の死刑再導入後、8000人以上が死刑判決を受けた。これはある死刑囚の物語ーーー』全10回に渡るドキュメンタリーはすべてこの一文から始まる。

アイ・アム・ア・キラーは死刑判決を受けた殺人者へのインタビューを通して事件を振り返るドキュメンタリー番組。全部で10話、10の殺人事件を振り返る。

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この番組の高く評価すべき点は2つある。まず一つは、死刑囚だけでなく、弁護士、検事、さらには被害者の遺族、加害者の家族まで、様々な関係者へインタビューを行っている。

それぞれの立場の人間がどのように事件を、加害者を、被害者を、考えているのか率直な思いが伝わってくる。驚いたのはほぼ全員が顔出しで登場していて、むしろ顔を隠す人のほうが珍しいくらいだ。

もう一つは、それぞれ関係者のインタビューの録音を加害者側から被害者側へ、被害者側から加害者側へ聞かせていることだ。背反的な立場の率直な思いを届ける場面はなかなか見られない。それだけに見る価値はあるだろう。

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誰もが人生で一度は誰かを殺してやりたいと考えたことがあると思う。もしそうでないのならあなたはとても良い人間関係に恵まれた人生だと自負して良い。この番組を見つけたとき「人を殺したいという気持ちはどんなものだろう」「どんな衝動だろう」と改めて気になったのだ。

番組を見て感じたことは、気持ちの整理がつかないのはたいてい死刑囚よりも遺族のほうだということ。大切な家族の命を奪っていった人間が刑務所であっても生き続けているという現実は、遺族にとってはあまりに非情で、耐え難く、理不尽なのだろう。その現実に事実に向き合ったとき、一体どんな気持ちになるのだろうか。



幸い自分の身の回りで命を奪われるような悲劇は起きていないし、今後も起きないことを願いたい。しかしながら国内でも悲劇が起きていることは認識しなければならない事実だ。だからこそ「いつか自分が悲劇を起こすかもしれない」という感覚が悲劇を防ぐのだと思いたい。



第10話目のエピソードで、父親を殺された息子がインタビューで語った特別でない言葉がとても印象的だった。その言葉は、計り知ることのできない怒りと孤独なのだと思う。これを締めくくりの言葉として今回の記事を終わろう。



「よく聞かれるよ。『奴が死刑になったらすべてが終わるのか?父親を殺した男が死ねば終結する?』そんなわけない。

終結っていうのはすべて忘れるってことだろ。忘れるなんて絶対にありえないよ。」